育児コラム

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ネットから入る育児情報に惑わされないために…
 
診察室でお母さん方と話していると、度々「ネットで…って書いてあって心配になりました」という声を耳にします。
医療情報はもちろんのこと、育児情報においても、ネット上には情報があふれています。そのような情報には信頼性に欠けるものも少なくありません。間違った情報に惑わされてしまう時間がもったいないですし、万一お子さんの健康に影響が出てしまう可能性もあります。
もしご心配なことがあれば、ぜひご相談ください。 

1.「ねんねトレーニング(ねんトレ)」について

ネットや書籍でも話題になっていますね。最近お母さん達からの質問も多くなったなと実感。小児科医の立場からお話しいたします。
  
まずは自然な赤ちゃんの眠りについて。
 生まれたての赤ちゃんの睡眠は小刻みですが、1日におよそ18時間くらい眠ります。
しだいに昼と夜の違い(概日リズム)が区別できるようになり、眠りの大部分が夜間に集約するようになります。
しかし、そのリズムの成長には個人差があります。
 
1歳の時点で、毎晩規則正しく(22時~6時まで)眠ることのない赤ちゃんは、およそ3割いるという研究があります。
1歳になっても夜たびたび起きることは、赤ちゃんにとってはごく自然なことなのです。
 
ヒトは寝ている間、浅い眠りと深い眠りを繰り返しています。
赤ちゃんの眠りのパターンは、この繰り返しが大人よりも小刻みであることが分かっています。
大人よりも浅い眠りのタイミングが多くやってくる、ということです。
このことも、赤ちゃんが夜でも度々起きる理由のひとつかもしれません。
 
ヒトの赤ちゃんの睡眠パターンが小刻みになったのには、他の動物と違う特徴があるようです。
 
昔ヒトが繁栄し始めた頃、生後まだ何もできない赤ちゃんは、脳を急速に発達させるために、母親のすぐそばに抱かれながら高カロリーで消化のよい母乳を頻繁にもらって過ごす必要があったと言われています。
昼夜問わずに母乳を飲んで、早く大きくなって病気や危険な環境から身を守っていたのですね。
 また現代の赤ちゃんにとっても、特に消化のいい母乳栄養の場合は夜にも頻回授乳が必要になることは、みなさんもご存じかと思います。
 
眠りの環境を考えると、欧米を中心として行われているような赤ちゃんを一人で寝かせる睡眠環境の歴史は、まだ浅いといえます。
日本人は今でも子どもと親が同じ部屋で寝るお家はたくさんあり、より自然な形で赤ちゃんが眠れる環境があるのかもしれません。
 
ここまで読んでいだいてお分かりの通り、赤ちゃんは一人で眠ることに慣れておらず、また夜中にたびたび起きるのが正常(必要な)な睡眠リズムなのです。
 
赤ちゃんが夜中に起きてしまったとき、実際、みなさんは赤ちゃんが夜中に起きてしまったとき、どのように対応していますか?
 
・授乳する
・がんばって抱っこで寝かせる
・パパが寝かせる
・そのままにしておく
 
いろいろな答えがありますが、私が今まで相談を受けた中で一番多かった答えが、やはり「授乳」でした。
 
赤ちゃんは、夜中に目が覚めたとき、起きているように見えても実際は目を閉じて泣いているだけのことも多く、このタイミングで授乳をして速やかに眠れた方が、赤ちゃんもお母さんも眠りが妨げられずに済む場合が多いようです。
 
抱っこしているうちに、もしくはそのままにしておくうちにしっかり覚醒して遊び出してしまうと、眠りが中断してしまい、しかも再び寝かしつけるのが大変になってしまいます。
 
ねんトレは必要なの?
赤ちゃんが一人で眠れるようにトレーニングする必要はありませんし、トレーニングできるものでもない気がします。
むしろ、月齢が小さいうちから長く深い睡眠をとるように促すことは、赤ちゃんをSIDS(乳幼児突然死症候群)のリスクにさらすことになるという意見もあります。
 
あまりに寝不足で育児がつらいという場合には、昼間にお母さんが休める時間ができるようにサポートしてもらうなど、赤ちゃんの眠りをコントロールする以外の方法を探してみるのはいかがでしょうか。
 
参考情報
・NPO法人 日本ラクテーション・コンサルタント協会ホームページ
わが子がぐっすり眠れる魔法のスイッチ(ハーヴェイ・カーブ著 講談社)
 
院長 江田 

2.夜間断乳について

最近「夜間断乳」という言葉を耳にするようになりました。
有名育児雑誌から広まったという言葉ですが、医学的に必要なこともなく、赤ちゃんの育ちや生活にとっては不自然なことは確かで、小児科医として戸惑いを感じています。
その言葉を知ったママ達から「夜間断乳はしなきゃならないの?」という不安の声が聞こえてきます。
 
人見知りが始まる8ヶ月ごろから1歳前後にかけて、
夜の授乳が増えてしまったという相談がとても多く寄せられます。
 
みなさん、何とか抱っこなどで寝かせようと試みるものの、
やっぱり授乳でないと寝ない、結局おっぱいをあげてしまった、とおっしゃいます。
私も息子の授乳中にこのパターンを体験し、2歳近くまで
寝かしつけるときに授乳していました。
 
日中に消化のよい補完食(離乳食)や母乳で過ごす赤ちゃんは、成長するにつれて夜間おなかが空いたり、のどが渇いて母乳を欲しがることが多くなるかもしれません。
 
またこの頃の母乳育児には、とても大切な親子のコミュニケーションという役目があると(個人的に)思っています。
 
何かイヤなことがあったとき、寝ぐずったとき、ちょっと一息つきたいときに、お母さんに甘えてみたら、甘くて美味しい母乳を飲んで安心できる。
こんなに赤ちゃんがホッと安心する時はないように思います。
 
大人でいうと、コーヒータイム?
仕事終わりのビールの美味しさ?
落ち着く場所で、好きな飲み物を飲んでリラックスする…大人も同じですね!
 
また、断乳をしたらよく寝るようになったという話を聞いたが本当か?というご質問もとても多いです。
 
実際は人工乳で育てられている赤ちゃんは、母乳で育てられている赤ちゃんよりも早い時期に、深くて(1回の睡眠が)長い睡眠をするようになることがわかっています。
深くて長い睡眠は、この時期の赤ちゃんにとってナチュラルな睡眠パターンではありません。乳幼児突然死症候群の危険因子に人工栄養が挙げられているように、ミルクで育てると長く寝てくれると前向きにとらえるのは危険です。
 
しかし、母乳栄養だから十分に睡眠をとることができない、と考えているお母さんもいらっしゃると思います。
 
そんな方にぜひ知っていただきたい研究結果があります。
母親の睡眠について調べた研究によると、母乳栄養は人工栄養の母親と同じか、より多くの睡眠を得ていることが分かっています。
調乳の手間がないことや、すみやかに眠りに戻れること、授乳中にも睡眠をとれることなどが理由かもしれません。
赤ちゃんそれぞれの持つ授乳や眠りの自然なリズムは、成長とともに変わります。
その変化に対して、周囲から入る情報に惑うことなく、ナチュラルに赤ちゃんの成長を見守ることができればいいなと思います。
 
院長 江田
 
参考文献
1Montogomery-Downs et al(2010) infant Feeding Methods. Material Sleep and Daytime Functioning.Pediatrics2010 126e1562

3.手づかみ食べのススメ

かるがも藤沢クリニック(小児科)の4か月健診やごはんクラス、ごはん外来では、赤ちゃんが自分で食べられる「手づかみ食べ」をお勧めしています。
手づかみ食べをすると、口の中に入ってきた食べものを飲み込む前の経験として、まず食べものを手に取りよく観察し、口に入れても安全だと知り、次はどのように口に運ぶか、どのようにかじり取るか、様々な工夫をしながら自分に合うように食べものを口に入れるようになります。さらに、かじり取った食べもののかけらを口の中でどう取り扱うか、ゆっくり時間をかけて試行錯誤を繰り返して、モグモグカミカミの練習をすることができます。こうして練習を重ねて、うまく食べものを扱えるようになって初めて、赤ちゃんは安心して、そして安全に食べものを飲み込めるようになります。まさに五感を使った食べものとの出会い、触れ合いの瞬間です。
これに対して親からスプーンでペーストを与えられる場合、食べものが何であるかを知る前に食べものが口に入り、練習する間もなく飲み込むことになります。赤ちゃんが驚いたり、口を開けなかったり、仰け反ったりするのも無理はありません。
 
 #手づかみ食べのメリットは? 
手づかみ食べは、赤ちゃんの様々な力を伸ばします。目で見た食べものを手にとって口に運ぶ動作は協調運動といって、視覚や触覚、食べものと口の距離感、手の運動、全てが協力し合って初めてうまくいく動作です。また、手でどうやって食べものをつかむか、柔らかいものをふんわり持つのか、滑りやすいものをギュッと持つのか、何本の指でつまめるか、そういった試行錯誤も繰り返して手先の器用さが増していきます。さらに手づかみ食べは、赤ちゃんに主導権があって食べ方を自分で選べるので、「自分でできる」という赤ちゃんの自信を高め、親にも信頼されていることでさらに意欲が増していきます。
 
#手づかみ食べを始める時期は?どうやって始めるの?
赤ちゃんの手づかみ食べの準備が整うサインは、手に持ったものを口に運び舐めたり噛んだりする、食べものに興味がありそう、支えると座れる、などです。つまり手づかみ食べは一般的な離乳食の開始時期から始めることができるのです。あなたの食事に赤ちゃんの手が伸びてきた時がチャンスです。家庭の食事から赤ちゃんにも安全で健康な食べもの(以下のサイトが参考になります)を目の前に置いてみること、これがスタートです。
 
百聞は一見に如かず。手づかみ食べをするお子さんの「食べる発達」を、ぜひご覧になってみてください(保護者の同意を頂いております)

#手づかみ食べ情報
具体的な手づかみ食べの方法は、当院ベビークラス「ごはんクラス」でご紹介しているほか、以下のウェブサイトでもご覧いただけます。
 
#神奈川県立こども医療センター偏食外来パンフレット
手づかみ食べのメリットや、月齢に合った手づかみ食べ食材が分かりやすく示されています。支援者にも養育者にも大変勉強になるツールです。
・心の準備編「どうしてたべてくれないの?」
たべない子どもの気持ちを理解したい方にお勧めです。
 
・はじめの一歩編「たのしくたべる」
どうしたらたのしい食事になるかヒントが書かれています
 
・ステップアップ編「いつどこでたべる?」(たべる時間と空間をデザインしよう!)
月齢に合った手づかみ食べ食材が大変分かりやすく示されています
 
・チャレンジ編「いつから・なにをどのように食べる?」
発達に合わせた具体的な「たべ方」「たべさせ方」が書かれています
#補完食「教えて!ドクター」佐久医師会
佐久医療センター小児科外来が作成するリーフレットです。
補完食に必要な情報はこれでOK!と言ってもいいほど、適切な情報が詰まっています。
補完食としっかり摂りたい栄養素、加えて手づかみ食べの大切さが、可愛いイラストと共に書かれています。
#日本BLW協会リーフレット
イギリスで約10年前に提唱された”Baby-Led Weaning”を日本で安全に広めようと普及活動をしている団体が作成しています。なぜ手づかみ食べが赤ちゃんの発達に沿った合理的な離乳方法なのか、深く知ることができます。手づかみ食べに合った食事環境、避けるべき食品など具体案が示されています。

4.授乳中の乳房の痛みを徹底解説

痛い授乳には理由がある!授乳中の痛みの原因と対応策を解説します
母乳育児をしているお母さんにとって、授乳に伴う痛みがあるのは辛いですね。 今回は、授乳中の女性に起こる乳房や乳首の痛みについて、様々な原因と受診の目安、治療方法、支援先の探し方についてお話したいと思います。
 
乳房や乳首の痛みといっても、様々な原因で起こることが分かっています。 いつ痛いか、どのくらい続くか、どのような痛みか、痛みのある部位は見た目どのような状態かをよく観察すると、原因が分かるかも知れません。
〜まずは赤ちゃんの抱き方と吸わせ方を確認しましょう〜
#適切なポジショニングとラッチオン #乳頭損傷 #母乳分泌過多
 
授乳中の痛みの原因で最も多いのが、赤ちゃんがおっぱいを口深く含めないことによるトラブルです。 授乳中に乳首や乳輪が無理に引き伸ばされて痛みを感じたり、傷ができて炎症を起こしたりすることがあり、とても痛いです。また母乳の流れが一部滞ると、乳汁うっ滞(しこり)や乳腺炎(しこり+強い痛みや腫れ、発熱)になることもあります。このようなトラブルが続く場合には、まずはお母さんの授乳姿勢や赤ちゃんの抱き方、吸わせ方を確認してみましょう。
適切な赤ちゃんの抱き方や含ませ方は、以下のサイトで分かりやすく解説しています。
ラ・レーチェ・リーグ(以下L L L)母乳なんでも相談室「赤ちゃんが母乳を飲みやすい抱き方や授乳の方法はありますか?」
 L L Lのサイト「深く吸わせるって、どうやるの?」も参考にしてください。
 
どうしても赤ちゃんが口深くおっぱいを含まない理由の一つに、母乳分泌過多(必要以上に母乳が出る状況)があります。お母さんも気づいていないことがありますが、吸い始めにピューッと母乳が吹き付けるように出てきたり、授乳していない側の乳房からも母乳がたくさん溢れてきたり、赤ちゃんが授乳中にむせやすい場合には分泌過多かも知れません。この場合、お母さんが背もたれに寄りかかって授乳するリクライニング授乳を試してみてください。
L L L母乳なんでも相談室「母乳の量が多くて困っている」も参考になります。それでも改善がない場合には専門家を受診しましょう。
〜早めに受診した方がいい場合〜
・母乳がうまく流れない #白斑 #乳汁うっ滞 #乳腺炎
 
母乳の出口(乳管口)が詰まると白くポツッと栓ができることがあります。これを白斑と言いますが、痛くなくて授乳も順調であれば取り除く必要はありません。自己流のマッサージや針で突くなどの対応をしてしまうと、かえって悪化することがありますのでやめましょう。白斑ができた時は、先にお話しした赤ちゃんの抱き方と含ませ方を確認しましょう。
 
乳房の中の母乳の通り道(乳管)が詰まって母乳が流れ出にくくなった場合には、乳房に痛みを伴うしこりができます。痛みは授乳以外でも続き、押すと痛みが強くなるのが特徴です。軽い場合には赤ちゃんに母乳をしっかり飲んでもらうことで解消しますが、なかなか母乳の流れが改善しないと乳腺炎を引き起こすことがあります。痛みがひどい、しこりや皮膚の赤みが日増しに強くなる、発熱が1日以上続くなどの場合には、細菌が感染してしまった可能性がありますので医療機関を受診してください。
・乳首周囲の皮膚炎による痛み #乳頭周囲炎
 
授乳中のお母さんの乳首は非常にデリケートです。ブラジャーや母乳パットとの接触、繰り返す授乳の刺激によって皮膚炎が起こることがあります。軽い皮膚炎であれば、しぼった母乳をつけたり、精製ラノリンをぬることで軽快する人もいます。痒みがひどかったり滲出液が出たりするような湿疹の場合には、細菌やカンジダ感染を併発している可能性があるため受診しましょう。
注意:傷や湿疹ができた乳首を食品ラップで覆うのは、感染症を悪化させることがありますので注意してください
〜母乳育児支援専門家の支援が必要な場合〜
乳腺炎でもない、赤ちゃんも深くしっかり吸えているのに、乳房が痛い!そのような場合は、レイノー現象(血管攣縮)やカンジダ感染症(カビの一種)かも知れません。日本では、これらの疾患は助産師や産婦人科医の中でもあまり知られていないため、お母さんの気のせいではないの?などと言われてしまうこともあるようです。しかし諸外国では乳房痛と言えばこの2つを考える、と言ってもいいほど知名度が高いものです。
・レイノー現象(血管攣縮)
 
授乳後や授乳と授乳の間に乳頭や乳房に強い痛みがあり、その時に乳頭の先端が白っぽくなる様子があればレイノー現象を疑います。この現象は手足の先端にも起こる症状ですが、乳頭にも起こります。ホットパックで乳房を温めたり入浴したりすると楽になるのもレイノーの特徴です。末梢循環を良くする漢方「当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)」が有効な場合があります。この漢方薬は市販されています。それでも良くならない場合には、血管を広げる作用のあるお薬を飲んでいただくことがあります(保険適応外)。
当院では、レイノー現象でお困りの方の相談を県外からもお受けしています。頻度は多くない印象は受けますが、授乳中の方がこの症状で相談した場合に「そのようなことは聞いたことがない」「そのような相談は受けられない」と言われ、心身ともにとても辛かったという声を聞いています。レイノーやカンジダに関わらず持続する強い痛みは授乳を苦痛にし、さらには日常生活に支障が出る場合もあります。我慢する必要はありませんので専門家に相談しましょう。遠方の方はまずお電話でお問い合わせください。
・カンジダ感染症 #カンジダ皮膚炎 #深在性真菌感染症
 
痛みの感じ方が、「焼けるような」「刺されるような」強い痛みが乳頭や乳房にあって、乳頭に光沢のある赤みがみられたり赤ちゃんの舌が白くなっていたりする場合は、カンジダ感染が考えられます。受診していただいた方には塗り薬や飲み薬を処方します。治療が有効な場合には、1週間程度で痛みがかなり良くなる方がいらっしゃいます。
母乳育児支援の専門家とは?
国際認定ラクテーション・コンサルタント(I B C L C)は、母乳育児を科学的にアセスメントして支援を行います。この資格を持った医師はカンジダ皮膚炎やレイノー現象への医学的対処についても知識があり適切な処方も可能です。全国のI B C L Cはこちらから探すことができます。医師ではないI B C L Cも必要に応じて医師と連携することができます。
 
かるがも藤沢クリニックでは、助産師と小児科医が連携して授乳支援を行っています。乳頭痛に対しては保険診療で対応し、必要に応じて薬物療法を行っています。まずはお電話( 0466-25-3314 )にてご相談ください。