心地よい抱っこ

基本の抱っこベビーキャリア(抱っこ紐)の選び方・使い方

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 最近、数多くのおしゃれなベビーキャリアを見かけます。お祝いやお下がりでいただくことも多いのではないでしょうか? このコラムでは、抱っこするパパとママの身体に負担をかけず、抱っこされる赤ちゃんの育ちにもプラスになるようなベビーキャリアの選び方と使い方をお伝えします。


ベビーキャリアの用途はその名の通り「赤ちゃんを持ち運ぶためのもの」です。
ベビーキャリア発祥の地である欧米は、基本的に移動には車を使い、赤ちゃん連れで街中を歩くときはベビーカーで移動する文化です。ずっと抱っこしていることを想定して設計・製造されていないのでしょう。サイズも、日本人よりも大柄な欧米人向けに作られています。
日本では、赤ちゃんとのお出かけにベビーキャリアはマストアイテムですが、ベビーキャリアで抱っこしていると赤ちゃんが嫌がったり、長時間の抱っこによりママの肩や腰が痛くなったり、お互いに快適に使えないことがあります。
それぞれの正しい使い方を知り、親子とも快適な抱っこができると良いですね。

1.抱っこの基本 快適に素手で抱っこしよう

まず素手の抱っこが基本です。 お互いに心地よい素手抱っこを覚えましょう。そして、どんな道具を使ってもその心地よい抱っこを再現できればOKです。
素手抱っこのコツについては、「NPO法人だっことおんぶの研究所 」が勧めている方法がとても分かりやすいのでご紹介します。
当院でもオリジナルのリーフレットを作成しました。
このポイントを押さえて抱っこすると、自然と赤ちゃん側にも好ましいコアラ抱っこ(背中がゆるやかなカーブ、足がM字型に開く、口がポカンと開きにくい)の姿勢になります。
へこおび(兵児帯)やスリングは、素手抱っこを限りなく再現できる優れものです。これについては(書くと長くなるので)後述する専門家にご相談ください。

2.ベビーキャリアを選ぶ

この素手抱っこが身体に馴染んだら、それを再現できるようなベビーキャリアを選びます。
ベビーキャリアは、保護者の体型や用途によって向き不向きがあります。
決してお安い買い物ではないので、ぜひ専門店でいくつか試着してみてください。
お友達の勧めやお祝いに選んでもらうなどしても、使ってみたら自分に合わなくて買い直す方もいらっしゃいます。
 
赤ちゃんを抱くアイテムは多数ありますが、今回はシェア率が高いエルゴベビーとベビービョルンを例にとってコメントします。
メーカーのCMは良いところを強調しますので、ここではちょっと辛口なコメントをします。
個人的意見であることをご了承の上、参考になさってください。
 
まず2つのメーカーに共通することは、なかなかよく考えられていて「説明書通り」に使うことができれば心地よい抱っこを実現できるところです。
しかしながら「説明書通り」に抱っこするのは、実はとても難しいです。
使う前に必ず説明書を見て正しい使い方を確認してください。
エルゴベビーはインスタグラムで使い方の動画を見ることができます。初めてのお出かけ前に、何度か練習をしてから赤ちゃんを抱っこしましょう。
エルゴベビー

エルゴベビー

ハワイ発のベビーキャリアです。日本ではダントツ人気なのではないでしょうか。
がっしり体型アメリカ人向けに作られていますので、肩幅がしっかりある方や長時間の抱っこが必要な場合にお勧めできます。前向き抱っこと対面抱っこ、両方できるタイプとできないタイプがあります。線の細い体型の方や身長150cm以下の方などは、色々と工夫しても赤ちゃんとうまくフィットしないことがあります。また使わないときにかさばるので、コンパクトに収納したい方には向きません。
エルゴのオムニシリーズは、背当て布の幅を対面用と前向き用にスライダーを変えることができますが(写真1)、間違って前向き用の位置で対面抱っこをしてしまうと(写真2)、赤ちゃんのお尻と太ももが十分にサポートされず、足がまっすぐだらんと垂れ下がってしまいます。これは街中でよーく見かける抱っこの間違いで、赤ちゃんはとても辛いので気をつけてください。また気づかないうちにスライドが動いてしまうこともあるそうなので、メーカーさんにはぜひ改善をお願いしたいです。
対面抱きする時の適切なスライダー位置
 

写真1

対面抱きする時の適切なスライダー位置
 
前向き用のスライダー位置で対面抱きをすると、赤ちゃんの足が伸びてしまう

写真2

前向き用のスライダー位置で対面抱きをすると、
赤ちゃんの足が伸びてしまう
ベビービョルン

ベビービョルン

スウェーデン発のベビーキャリアです。
日本に入りたての頃と比べてデザインが変化し、より快適に抱っこしやすくなりました。
片手でバックルを操作することができる簡単さも人気のひとつ。
前向き抱きに向いている商品はなく、エルゴほどではないものの、やはり小柄な方には向かない場合があるようです。
身長が低めの方が着用すると、紐が長く余ってしまいプラプラと邪魔になることがあります。
ベビーキャリアMINIは、赤ちゃんのお尻と太ももに当たる布面積が狭いため、赤ちゃんの股関節の育ちに大切なM字型ポジションになりづらく、足が下に伸びてしまう点です。どうやらスウェーデンでは赤ちゃんの股関節脱臼の頻度が低いらしく、また生後6か月以降の子どもをあまり抱っこしない文化のようで、このキャリアでも安全に使えるのでしょう。しかし日本で販売するのであれば、それぞれの国の事情を考慮していただきたいなと思います。

3.赤ちゃんのからだを育てるための抱っこ

抱っこの姿勢は、赤ちゃんの育ちにとても大切です。
縦抱きでも横抱きでも、赤ちゃんの後頭部と背筋、骨盤がまっすぐになるように、また股関節がしっかり折れ曲がったカエルのような足の形(M字肢位)になるような抱っこを心がけてください。
特にM字肢位を保てない抱っこ姿勢もしくは抱っこ紐のご使用には、充分に注意してください。
4か月の乳児健診では必ず股関節の開き方を確認し、股関節形成不全(先天性股関節脱臼)がないかを確認します。
股関節形成不全を疑わせる症状は、股関節の開きや太もものシワ、足の長さに左右差があるなどです。これを疑う場合には必ず保護者に抱っこ確認させていただきますが、ほとんどの方が赤ちゃんの足が伸びてしまうような抱っこをされています。
そして、抱っこや寝かせ方を変えるだけで、これらの症状が次第に目立たなくなってくることも多く経験します。
 
たかが抱っこ、されど抱っこ。
なかなか適切な抱っこの方法を教わる機会は少ないと思いますが、とても大事なことなのでぜひ多くの方に知っていただきたいです。

4.抱っこの専門家に相談しよう

色々と書きましたが、やってみないと分からないことも多いはず。
そんな時はぜひ抱っこの専門家に相談してみてください。餅は餅屋です。
かるがも藤沢クリニックには、抱っこや抱っこ紐について専門的知識を持ったかかりつけ抱っこコンサルタントが在籍しています。気軽に相談してみてください。

抱っことおんぶの専門家 柳川より 

プロフ2

安全で快適な抱っこやおんぶができることは、親子の生活を底上げして
見たことのない景色や感じたことのない感覚を与えてくれると信じて、
院内の待合室で、抱っこ支援業務にあたっています。

「抱っこの仕方がよくわからない」
「赤ちゃんが反りかえって上手く抱けない」
「抱っこ紐の使い方が正しいかわからない」
待合室では様々な相談を受けます。

赤ちゃんをお迎えした親子が行う「抱っこ」や「おんぶ」。
しかしこのやり方を、丁寧にきちんと教えてくれる医療機関は決して多くはありません。
日常の中で必要であり、かつ親子の愛着形成や赤ちゃん自身の発達にも少なからず関わってくる「抱っこ」という行為、
家事がはかどったり、緊急時の避難にも活用できたりするだけでなく、赤ちゃんの好奇心や模倣力を養うことのできる「おんぶ」という行為、
どちらも親子のQOLを上げてくれると、現場での支援を通じて確信しています。

私自身は、第1子の産後、初めてスリングで抱っこした時に感じた
愛おしさと可愛さと心地よさを今でもずっと忘れられません。
ただただかわいくて、背中やおしりを撫でて、この感覚を
すべての親子に知ってほしいと思って
現在の仕事をしている節があります。

待合室では、現在のお悩みやおうちの状況もヒアリングして、
抱っこの方法や抱っこ紐の使い方・選び方をご提案していますが
「赤ちゃんの髪の毛の匂いをたくさん嗅いで、おでこにチューして、おしりをたくさんさすってあげたくなるような、気持ちの良い抱っこをたくさんしてほしい」
「高い位置でおんぶして、肩越しに世界を見ている様子や、背中で寝てくれたお子様の気配をたくさん感じてほしい」
ということも、心地よい抱っこやおんぶを最前線で伝える人間の本音でもあります。

抱っこやおんぶのこと、なんでもご相談ください。
人が人を育てていくなかで、抱っこは必要なものであり、
そしてそれは快適な行為であることが重要であるという信念のもと、
対応にあたらせていただきます‼