麻しん(はしか)感染への備え
2019年、当院にひとりの麻しん患者さんが受診しました。その方は予防接種を受けないと決めている家庭の2歳のお子さんでした。麻しんは感染力が非常に強いため、免疫のない方が感染すると100%発症します。この患者さんが麻しんだと分かった直後から保健所と対応を始めましたが、当院から2名、その方が通っていた保育園から5名の感染者が発生する集団感染となってしまいました。他にも70名以上が緊急予防接種を受け、予防接種を受けられない方は免疫グロブリン(血液製剤)注射を受け、保育園や他の医療機関、薬局などを合わせて600名以上の接触者が3週間の健康観察を余儀なくされました。
あの時、予防接種を受けていなかった1人の麻しん感染者によって、普段しっかり予防接種を受けている方、ワクチンを受けられない赤ちゃんや妊婦さんなど、多くの人々の健康を守りきれなかったことが、医療従事者として大変に悔しく、無力感でいっぱいです。
あのような事態を繰り返さないために、当院では麻しん感染への備えとして予防接種を強く勧め、みなさんに正しい知識を持っていただけるよう啓蒙活動を行っています。
1歳になったらすぐに定期MRワクチン接種を!
麻しんは免疫がない方には必ず感染します。できるだけ早く予防接種を受けて免疫をつけましょう。
当院では、1歳になったらすぐに予防接種を受けていただくよう勧めています。1歳1か月を過ぎてからのMRワクチンは予約枠に限りがあるため、電話にて予約をお願いします。
当院では、1歳になったらすぐに予防接種を受けていただくよう勧めています。1歳1か月を過ぎてからのMRワクチンは予約枠に限りがあるため、電話にて予約をお願いします。
MRワクチンは2回接種が原則!
年長さんになったら2回目のMRワクチンを必ず受けましょう。
保護者の中にも、子どもの頃に1回だけ受けてその後免疫が弱くなっている方がいます。抗体検査を受けて免疫を確認するか、2回目の予防接種を受けていただくようお勧めしています。当院では保護者の抗体検査や予防接種も行っていますので、ご相談ください。
生後6か月になったら自費MRワクチンを考えて!
生後6か月になったら、自費接種としてMRワクチンを受けるか一度考えましょう。生後6か月ごろには、生まれる前にお母さんからもらった免疫がなくなってしまうからです。保育園に入園する方や海外旅行を予定している方には、特にお勧めしています。
予防接種に対する正しい知識を持とう!
当院では、主に初めて予防接種にいらした方を対象に、看護師によるワクチンガイダンスを行っています。ガイダンスでは、予防接種の効果や副反応への具体的対応、任意接種などについてお話しています。どなたでも参加していただけますのでお声かけください。
院内感染を防ぐために!
当院では、1歳1か月以上の初診患者さん全員にMRワクチン接種歴を確認し、万一受けていない(同伴者を含む)場合には改めて受診をお願いするなどの対応を徹底しています。これは、万一麻しんの持ち込みがあった場合にも、院内接触者を極力少なくするためです。
麻しんの初期は咳や鼻水、発熱といった症状で始まります。他の患者さんと接触なく診察することは、どの医療機関でも不可能です。ご不便をおかけしますが、どうかご理解ください。
世界で大きな問題に!ワクチンを受けないと決めている人たち
現在国内で発生する麻しんは全て、海外から持ち込まれたウイルスによるものです。世界中から多くの外国人観光客が訪れるようになった今、日本全国どこで麻しんが発生してもおかしくない状況ですが、どれだけ予防接種を啓蒙しても子どものMRワクチン接種率は100%になりません。
麻しんの感染力はインフルエンザの10倍です。感染者がいた空間でウイルスは2時間浮遊し、その空気を吸った方に感染します。免疫のない方は100%発症し、他の細菌感染を合併しやすいため先進国でも1000人にひとりが死亡すると言われています。麻しん感染から回復しても、10年以上経った後に脳炎になり寝たきりになる方もおられます。
このような事実を以ても、予防接種を受けないと決めている方々の考えを変えることは大変難しく、いまワクチン忌避者は世界中の健康問題に発展しています。
最後に
麻しん発生を経験した医療機関として、日頃から現実的かつ有効な麻しん対策を行うことは私たちの責務です。受診される方にはご面倒をおかけすることもありますが、どうかご理解とご協力をよろしくお願いします。